2018年07月10日

出版社を引き継ぐ

この代表コラム。私がnoteで書いている「飯田橋の小さな出版社の社長です」と、基本的に同内容で連動しますが、こちらには主に出版に関わることを選んで掲載したいと思います。たまには業界ネタというか、これから出版社を立ち上げようとか、どこかの出版社を引き継ごうとしている奇特な方たちに少しは役に立つかもしれないことも書こうかと思いますが、基本的に私の器以上のことは書きませんし、あんまり頭も切れないし、見た目もブ男だし、若白髪だし、100キロ近くのデブで人見知りで、時々やらかす不器用人間なんで(だんだん自分で書いていて本当にダメ人間かもと思ったり…)、グダグダした話も多いかと思いますが、あんまり無理せず、背伸びせず、経験したことを軸に書きたいと思います。

まあでも読んだら「やっぱり出版社経営は無理そう…やめておこう」となってしまって、せっかく衰退期の出版業界に新しく芽吹こうとしているのを摘んでしまうことがないように、悪い影響がないことを祈ります。

出版社の起業には、いくつか方法があるとは思いますが、起業自体は、それこそ今は資本金1円でもできるし法務局に登記すればもう経営者なんで、それ自体はできますが、起業したあとに出版社の場合の大きなハードルは、どうやって作った本を全国の書店に流通させるかということがありますが、まずとりあげるとすると、最近話題の「ひとり出版社」で多いのが、トランスビューと協業して書店に本を流通させる方法があります。知り合いの出版社もいくつかこの方法で出版社を立ち上げたあとに本を全国の書店に流通させることに成功しています。他にも、昔からありますが、星雲社とかで口座を借りて流通してもらう方法、あとJRCなどの大手取次ではない、わりと契約のハードルが低い小取次と契約して、その小取次が卸していない書店にも、仲間卸しでその取次から大手取次に入れて全国の書店に流通させる方法などなど(かなり大雑把に話してます。この手の話はネットで他にもたくさん書かれているし、本も出ているので、そこで読んでみたらいいかと思います)、ありますが、私の場合は、すでにあって、本も出し続けている出版社を事業承継、引き継いだわけです。

事業承継。これは出版業界だけでなく、どこの業界、会社でもある一般的な会社の引継ぎの話になりますが、まず完全にその会社の実権を握って「雇われ社長」ではない決定権のある経営者になるためには、その会社の株式を過半数以上取得しなくてはなりません。ここがまず最初のハードルです。当然金がかかります。その株式の評価額によっては、ものすごく金が必要で、最初から無理ということもあります。私の場合も結構無理な金が必要でしたが結果的に金融機関からの融資でお金を用意しました。ということで、経営者になった時点で結構な額の負債を引き受けることになりました。

駆け足で書きますが、そのあと、株主総会で代表取締役に選任してもらい、それをもって、法務局に登記変更にいき、社会的、法的にも晴れて代表取締役として就任することになります。

ここまででも、細かく言うと、お金のこと、株式を売ってもらう株主や、会社の取締役との話し合いなど、いろいろと面倒で精神的にタフにならないとうまくことが進まないことが実際はあるので、かなり強気でやる気を漲らせつつ進まないと、途中で「やっぱり面倒だし無理そう」となってしまう人もいるかもしれません。

まあでも最初から事業承継を進めて次世代に引き継ごうと真剣に考えている経営者から会社を引き継ぐのならば、どのハードルも乗り越えていくことは可能だとは思います。


この記事の執筆・監修者

春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。