2018年07月10日

まずは資金繰り、お金のこと

晴れて出版社の経営者、代表取締役になれて、もう今日から、今まで上司の顔色を窺い過ぎて我慢していた(たぶん前社長には、時々怒鳴り合いの喧嘩をするぐらいだったので、そうは見られていないかもしれないが、企画内容や、原価のこととか、印税のことなど、上司の機嫌を損ねたりして横やりが入って仕事が進まなくなることを恐れて、忖度し過ぎて疲れることがよくあった)、そんな日々ともオサラバ!! これからはやりたいように自由に本を作って売るぞう!!

などと、浮かれ気分は一日も持たなかった…。

そう、分かっては当然いたが、作りたい本を毎年たくさん自由に作るためには、そう、金がいるのだ。

会社の株式を買い取って実権を握るのにも、すごくお金がかかったが、今度は自由に出版していくためにも、たくさん金がかかるのである。あたりまえのことだが、権力だけでは自由になれない。金がなくては自由になれないのだ。

「出世払いでいいから、1000万やるから頑張れや!!」などと言ってくれるパトロンや応援してくれる作家さんもいないし(まだ編集者として未熟過ぎる僕に、そんな人いるわけがないが)、会社に潤沢な資金が常にあるわけでもない。しかもちょうど運悪く、僕が会社を引き継ぐ数か月前から、市場からの返品がものすごく増えた時期と重なって、取次からの入金も減ってきたのである。これでは自由に使える金も限られてくる可能性がある…。

まだ自己資金も残っているし、しばらくは大丈夫だが、この程度の資金力では、今まで通り、本の紙を選ぶにもなるべく安い紙(いつも同じような紙になってデザインも活きない)、インク代が安価な色(なるべく薄い色で印刷代を安くする=重厚なデザインがやりにくい、金とか銀とか真っ黒とか真っ赤なんて使えない)、印税も少なく(当然、専業作家やライターには仕事は頼みにくい。それでも引き受けてくれる人もいるが、いつも申し訳ない気持ちでいっぱいになる)、などなど、倹約して、ケチ臭く細々と仕事をし続けないといけないレベルの資金しかない。

これでは自由になれない…もっと自由に、明日への希望と新たな出版計画、企画のためには、融資してもらうしかない!!

ということで、今度は、今までの会社員の仕事では経験してこなかった仕事、銀行や信用金庫、信用組合などの金融機関に、融資をしてもらう相談をしないといけなくなった。

まあでもこれこそ、社長の仕事! 経理部長など融資担当がいない小さな会社の社長の重要な仕事なのだ。金融機関から融資を引き出して資金繰りを安定させる、先行投資につぎ込む、という会社の血液、軍隊だったら兵站。
でも融資なので、当然借金だから後で返さないといけない。ちゃんと将来回収して返済をしていける計画を立てて融資を引き出さないといけない。判断を誤ると命とり。しかも小さい会社の社長が金を借りる際は、すべて漏れなく連帯保証人になるので、もし金が返せない事態になったら、会社が倒産したって、そのまま返済義務は自分になるので逃げられない。
そんな大金を自分で返済できるわけないので即自己破産になってしまうリスクを引き受けないといけないのだ。僕は、まだ小さい子供を二人抱える二児の父でもあるので、非常に勇気がいることでもある。でも打って出ないと、なんのために社長になったのか分からない。
だから「見る前に飛べ」なのである。

だから、この融資、資金繰りという仕事は、本当に悩ましい、時には胃の痛くなる仕事なのだ。

まあでも、人生は冒険旅行。どうせ一度の人生。成功したって失敗したって、どうせ死ぬ時は死ぬのだから、打って出よう!


この記事の執筆・監修者

春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。