2018年07月28日

経営の優先順位・その1

僕は大学も出てないし、若い頃は定職にもつかなかったので(正確に言うと40歳までプロのシンガーソングライターを目指して仕事の傍ら音楽活動を続けていた)、経営も経理も、ちゃんと学んだ事は一度もない(その手の本は数十冊は読んだが、内容は1割覚えているかどうか…)なので、その手のビジネス書に書いてあるようなことは書けない。

でも、今この時、実際に会社を経営をしていて、しかも社内にも他に経営や経理を勉強した者は一人もいない。
というわけで非常に心細い環境で日々経営しているので、とにかく、会社が潰れないようにするには、利益を出すためには、売上を伸ばすためにはどうするか、それをできるだけ自分にとって分かりやすく、なるべくシンプルに、経営を続けるためには、資金繰りを上手く回すには、どうしたらいいのかを、日々考えている。

とはいえ、経営者になってまだ僅か3ヶ月、まだまだひよっ子経営者。経験して分かったことだけを書いていく。それがこの先、何年、何十年通用するかは、正直分からないが…。

会社を、出版社をなんで、なんのために経営するのか? それは突き詰めれば、自分が幸せになるためだ。「社会貢献」とか、偉そうな、下手したら偽善になりかねないことは言いたくないので、シンプルに答える。
「幸せになる」とは、どういったことか? 僕にとっては、仕事においては「今まで出会ったことのない文化、芸術、知識、思想を、著者を通して知ったり、企画を立てて一緒に考えたりして、それを本という形にして世間に伝える媒介者になること」、生活においては「家族や友人たちと楽しく暮らすこと」だろうか。
この幸せを得続けるためには、会社を潰さないように経営し続けて、生活と、本を作るために必要な金を確保できるようにしていくことが必要だ。

そのためには、どうするか?
会社の経営の優先順位はどうなっているのかを考えた。

究極にシンプルに考えると、「会社にお金があれば会社は潰れない」ということだ。
「当たり前じゃないか!」と怒られそうだが、この当たり前のことを続けられれば会社は潰れることはない。
もっと具体的に言うと、会社の銀行口座に常にある程度の預貯金がある状態にしておけばいい。それが最優先事項だ。
そうすれば、毎月支払う社員の給料、会社の事務所の家賃と光熱費、本を作るために使った印刷代と製本代などを支払って行ける。

また「当たり前じゃないか!」と言われそうだが、何が言いたいかと言うと、いくら今月の受注金額が多くても、出した本の評価が高くても、刊行点数が多くても、社員が休まず働いていても、今月の預貯金が足りなければ経営ができなくなるのだ。だから最優先事項は、もし預貯金が足りなくなりそうになったら、銀行に融資してもらうなり、誰かに資金援助してもらうなり、社長自らの貯金を切り崩して会社に貸し出したりするなりして、経営に必要な預貯金を常に会社の口座に入れておかなければならない。
いくら取次から半年後にならないと売上金が入らない新刊(しかも、いくら入るかも分からない)を増やしても、すぐに売上金が入らない受注(売掛金になるような)を増やしても、社員が毎日夜中まで働いても、支払う時点の預貯金が足らなかったら支払いができず、会社は潰れてしまうのだ(取引先に返済を待ってもらう。銀行に返済をリスケしてもらうなどの方法は最後の手段だ)。

だから最優先事項は、会社にお金を常に残しておくこと。それが借金だろうが、取次からやっと入った半年前に出した新刊の売上だろうが、社長が会社に貸し出した金だろうが、その入金先は、まずは関係ない。

「会社を潰さない」ためには、とにかく、お金を確保し続けること。
これが最優先事項だ。

この記事の執筆・監修者

春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。