2018年10月19日

守りだけでも危険

社長になってから、気がつけば今月末で半年が経とうとしている。
日本で起業する会社の約4割は、半年で廃業か倒産して消えていくと言われていますが、なんとか残り6割には入ったようです。

しかし…こんなに会社って潰れてるんですね。まあ中には、税金対策で作ってすぐ潰してしまったような会社もあるんでしょうけど、それにしても多い。会社を経営して、維持することの難しさは、統計上も証明されていますね。

私が経営者になって、この半年でやったことを下記に挙げてみます。

●銀行など金融機関から、低利で長期の運転資金の借り入れ(現金の預貯金を増やして、経営に精神的余裕と、大型企画がいつでもできる状態にする)

●支払いサイトの見直し(支払い期日を今よりさらに先に伸ばしてもらって、売上の入金時期と販管費の支払い時期の期間を短縮し、資金繰りに余裕をもたす)

●無駄な経費の削減(月に数回しか使ってなかった駐車場を解約して、カーシェアに切り替え、実際あまり使ってなかったシステムの解約、より安くて使い勝手は変わらないシステムに変更等)

●電子書籍の拡充(倉庫代や販売の人件費などの販管費があまりかからない、少人数の出版社には運用しやすい電子書籍の点数を増やして売上アップ)

●倉庫会社を変更(大規模な物流倉庫を持つ倉庫会社に在庫を移し、納品スピードを上げることで毎週の取次への出荷量を増やし、さらに取次からの受注回収スピードも上がることで、全てのサイクルを短くして、売上の回収をスピードアップ)

●社内のバラバラだったネットワークやセキュリティ関連の強化、何処でも仕事ができるようにモバイル環境の整備、処理速度の遅いPCの入れ替え、古くなって壊れやすくなったプリンタの入れ替え、安価だが不安定だった出版社システムを、同価格でも、より優秀なシステムに入れ替え。

●今後の業務拡大を想定して、アルバイトを短期間雇い、仕事のスピードを上げられるかなど、働き方の改善の試み。

●出版社の財務に詳しい、税理士事務所の方に会社の顧問税理士についてもらう(A書房のK社長から紹介してもらう。顧問料も安くしてもらって、でもそれ以上の対応をしてもらって助かる)

●上記のことをこなしながら、毎月1点、担当編集した本を出す。

などなど、半年で、いろいろと手を入れた。

ただ、ここに来て肝心の新企画の準備が遅れてしまっている。新企画、新刊を、そしてヒット企画を出さなければ、上記の施策は完全に活きてはこない。ここからが重要なのだ。

あまり無理に、無駄に新刊を作らず、利益率を上げて、守りに入ろうともしてみたが、出版社の経営は、それだけでは劇的な改善は難しく、利益率もそんな簡単には上がらない。しかも新刊点数が減り、かつヒット企画が無ければ、売上はなかなか伸びてはくれない(当然だが)。やはり、売れる企画が無ければ難しいのだ。さらに、売上が伸びず決算の数字が悪くなれば、今後の銀行からの融資も実行してもらいにくくなる。

危険を恐れすぎず、果敢に新企画に挑戦しないと、特に、ロングセラーを持っていない、資産もない、新しく立ち上げた出版社の未来は、容易に切り開くことはできないということだ。

ということで、出版社の成長に必要な要素は、基本は昔から同じで、変わっていないのかもしれない。
出版社を成長させるためには、やはり読書の心を掴む、価値ある企画、新刊が必要。経営者になって半年で出た結論は、誰もが知っている分かりきったことだった。ということになる……まあ、それが一番難しいことなんだが……。

この記事の執筆・監修者

春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。