2019年02月16日

重版出来! でも現実は、それほど素直に喜べることでもない。

重版出来!!

弊社の今年の年始早々のニュースは、出版社にとってとても良いニュース「重版出来」で始まった。『北陸本線』の重版が決まったのである。

重版は、嬉しいことであるのは間違いない。売れたから、返品が書店から返ってきても、それを上回る追加注文が書店から来ていたから、重版を決定したのだから、良いことなのだ。

でも、実は、経営者にとっては、良いニュースではあるが、実は、そう手放しで喜べることだけではないのだ。

大きな悩みがある。制作費だ。印刷と製本代のことだが、実は、もし初版でもっと多くの部数を刷っていたら、もっと安く済んで、もっともっと利益が出ていたのである。

例えば、B5判ソフトカバーのオールカラー160ページの本で、3000部から4000部に部数を増やしたとしても、初版の時に4000部を一回で刷るならば、印刷と製本代は3000部と4000部で10万ちょっとぐらいしか変わらない。

でも、3000部作って、その後で、重版で追加1000部を刷ったとすると、たった1000部でも50万円ぐらいかかるので、同じ合計4000部発行の本なのに、初版で4000部刷った場合と、初版で3000部、重版で1000部刷った場合とで、制作費は40万円も違う。増えてしまうのである。

まあ、奥付に「重版」と入ってる方が、売れているイメージが明確になるので、書店にアピールはできるのではあるが、40万円も制作費が違うので利益もかなり違ってくるのである。それは経営者にとって痛いことである。

本音を言うと、品切れになった時は、嬉しさよりも、「あ…失敗したな。初版部数の読みが間違っていた。もっと刷っていれば…くそう」という感じだった。

なので、一番利益率が良い本の作り方は、その本がどれだけ売れるかを、できるだけ正確に判断して重版の必要のない、売り切れないギリギリの初版部数を刷ることが重要になる。

2000部売れる本ならば、2200部、800部売れる本ならば、1000部ぐらいと、売れる部数より200部ぐらい上乗せして初版部数を刷れば、だいたい問題ない。

ということなんだが、とはいえ、正確に売れる部数を予測するのは難しい。

的中率は、出版社歴20年の僕で、たいたい50%ぐらいだ。

まあでも、最初から売れる部数が分かってしまったら…なんのロマンも夢もないことになってしまうので、分からないということが全て悪いことでもないのだけれど。


この記事の執筆・監修者

春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。