ベストセラー
ベストセラーは、資本力、宣伝力のない小出版の場合は、狙って出せるようなものではないと思いますが、そんな小出版でも1万部以上のヒット作を出してしまった出版社の社長や営業担当者の何人かから、ヒットにどうやってなったのか、それに至る経緯を直接訊いたことがありますが、ヒットに至る最初のきっかけが、かなり「出会いと偶然」に左右されていると感じたことがあります。
某社は、それまでまったくやったことのないジャンルの企画の持ち込みがあって、売れると思わなかったけど、刊行して書店に並べてもらったら、やたらと初速が良かったので、営業がそれに気づいて、どんどん販促していったら大ヒットになった、とか。某社は、どこの出版社からも「売れない」と言われて断られた企画を、可哀想なので出してみたら、思いがけず大ヒットした、とか。
ただ、このヒット、よくよく訊くと営業担当者は謙遜してますが、やはり出してすぐの売上の変化を見て、すぐに「これはいける!」と察知し、すぐに小出版社であっても、販促で、できることを畳み掛けるようにいっきに、やれることは全部やり、販促と増倍に拍車をかけていたことが分かったりします。
やはり、編集だけでなく、営業スタッフの力が大きいのですね。
編集は、すぐに「切り口が良かったね!」とか、「タイトルが良かった!」「やっぱり売れると思ったよ、あの内容なら」なんて(まあ、それもありますけど)、すぐに担当編集の努力と成果に全部持っていこうとすることが多々ありますが、本が出た後に、その本を活かすか殺すかは、営業スタッフと書店員がどれだけ売ろうとしたかに、かなりかかっていると思います。
どんなに上手いラーメンを作っても、ひっそりと路地裏の隅で店を開くだけでは、誰も気づかないのと同じです。
それを知ってもらう努力を自ら進んでしてくれる人(営業スタッフや書店員)がいなくてはヒットには、なりにくい。
自戒もこめて、そう思います。
この記事の執筆・監修者
春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。