決算が良くなって
今度の決算は、かなり前期より良くなった。注目すべきポイントは、前期よりかなり出版点数が減ったにも拘らず、売上が大幅に増え、さらに書店に配本された本もよく売れたことによって当然だが、返品も大幅に減った。
売上だけ増やすのは、新刊点数と部数をたくさん作れば、当たり前だが売上も簡単に上がる。しかし、それをやると、当然だが製作費も大幅に増えて、さらに、もしそれらの本が売れなかった場合、大幅な返品増となり、確実に資金ショート(かなり危険な、もうやりくりできないレベルの資金ショート)を起こしてしまいかねない。それは絶対にできない。その手を使わずに決算を良くするためにはどうするか…そのことで、この一年はかなり精神的に追い込まれ、死ぬほどの奮闘努力をしなくてはならない状況に陥った。
なぜなら、「点数を減らして売り上げを上げる」ということは、当然だが、どの新刊も前期より大幅に売れる本に仕上げなくてはならない。そんなことは、総勢3名の零細出版社が、この不況下で成し遂げることは、簡単にできることではなく、下手すると、「点数を減らして売上も減って資金ショート」という最悪の事態になる可能性もある。なので点数を増やすのも危険だが、減らすのも危険なのである。しかも前期の決算は補助金を入れて最終的に黒字にはなったが、営業利益は出ず、営業損失が出てしまっていたので、銀行からも、「うーん、社長、次ももし営業損失を出して、二期連続営業損失なんてことになったら、次の融資もできなくなります。まず稟議は通りませんね」などと恐ろしいことを言われ、「ええ!そんなこと知らなかった…これはまずい」ということで、絶対に何がなんでも今期は営業利益を出さなくては、と、ものすごい覚悟と緊張感をもって臨んだ期だった。
そして一年、結果は、一年間とにかく売れるようにと闘いまくって、営業利益もそれなりに出て、はっきりとした黒字決算にすることができた。
そして銀行にも、その決算書をもって、自信をもってこの間の我が社の成果を説明したところ、無事に新規の融資も次々と決まっていった。
やはり、決算、決算書を良くすることが、経営を続けていく基本になることが、あらためてよくわかった。
この記事の執筆・監修者
春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。