2020年01月25日

陰キャでも勝負師

経営者になって最初の想定では、金がかかる大型企画をやるのは、そもそも貧しい会社の資金的なハードルがあるし、それこそ金かけて売れなかったら、いっきに会社も傾くので、大型企画は年1点ぐらいにしようかと思ってましたが、昨年は、次々と魅力的な企画をいただき、気がついたら大型企画を6点も刊行するという、終わってみたら、どの企画も予想以上に売れて良かったのですが、もし6点のうち2点でも大失敗してたら、確実に会社は立ち直れないほどの危機を迎えていたと思うと、自分は石橋叩いて渡る堅実な人間に周囲から思われていると思うけど、終わってみると、かなり危険な橋を何度も渡っていた勝負師だったことに気づくわけです。

私の人生を振り返ると、高校を出てすぐは、陰キャラなのに歌手を目指すという無謀なことをし、その後の比較的性格に合っていた書店員の仕事を経た後の出版社の社員時代は、全然性格的に合わない営業スタッフとして働き、そして今度はサラリーマンを辞めて、多くの人が斜陽産業で先が見えないから怖くてなりたがらない出版社の経営者になり、振り返ると私は、性格とか周囲が自分に張りたがるレッテルとは真逆な方向に、いつも進んできたことがわかります。

ただ言えるのは、別に周囲のレッテルへの反発でそうしてきたわけではなく、自然とそうなったということです(思い出すと他にも、初めて正社員になった書店は性格に合っていたけど、書店の仕事がブラック過ぎて行き詰まって、ネットワークエンジニアになるために資格をとって書店を辞めて、当時バブルのIT業界に入ったのも今思うと無謀でした。すぐに性格と合わな過ぎて限界を感じて辞めましたが、当時入社した通信会社からいきなり当時時価総額日本一の大企業、NTTドコモに出向になって、NTTドコモの名刺をもらって、これまた大企業の富士ゼロックスの本社に営業に行ったりと、そんな大企業ではたらく経験も少ししました)。

歌手を目指したのは、中学で長渕剛や尾崎豊や中島みゆきやニール・ヤングの弾き語りを見て衝撃を受け、どうしても自分もそうなりたいと思って、ろくに音楽の教育も受けてないし、人前で歌ったことも、そもそも歌う度胸もないのに、「もうこれしかない!」と思ってシンガーソングライターを目指しました。20歳から40歳までライブ活動を続け、計120回以上のライブをして、最後は音楽事務所に所属してプロを目指しましたが、40歳でついに諦めがつきシンガーソングライターを目指すのをやめました(しつこくやり続けましたが、それぐらい歌の世界に魅せられていました)。

出版社の営業マンになったのは、最初は書店員として働いていたころに書店に来る出版社の営業スタッフの姿が、とても物静かながら知的で、それでいて押し付けがましくなくかっこいい営業の方達と出会ったことで、営業という仕事の印象が変わりましたが、そのあと書店を辞め、IT業界に行きますが失敗し、また本の仕事がしたくなって今度は出版社に入ろうとしますが、大学も出てませんし編集の経験もない私は、姉が以前勤めていた出版社を紹介してもらって営業で入るしか仕事が無かったので営業部に採用してもらいましたが、書店時代に出会った営業スタッフの方々がみんな素敵な方達でしたので、営業の仕事に、そこまで抵抗がなく、むしろ自分もそうなりたいと思って頑張って、その出版社では営業部長となり、最後は編集部も統括する執行役員統括部長にもなって、北京にまで営業に行くほどまでになりました(ちょっと自慢オヤジ入ってますが、いろいろ無理してその間、失敗もたくさんしてます)。

そしてその出版社で15年も働いたわけですが、人生わからないもので、だんだんその会社の中で様々な失敗や辛いことがあるなかで、いろいろと歯車が狂いだしてついに退社、そして今度は「自分で自分の理想の会社を作ろう」と、独立することを考えて、今の出版社に入社して2年後に事業承継して経営者になったわけです。

今思うと、その時々の自分の思いには正直に生きてきたと言えるので、そういう意味では本当に悔いがない人生でしたが、まだまだ欲張りな私は、まだ見ぬ世界へ、広い世界へ進んでいきたいとも思うわけです。

まあ、でも、とはいえ、この48年の人生で、世間の人が認めるほどの大きなこと、社会貢献も、特に何もまだ成し遂げてもいないとも思いますので、自分という人間自体はたいしたことはない、どこにでもいる、何者でもない、ただのオッサンであるとも思うわけです。いや本当に他人にとっては、私がしたことは何の価値もないのではないかと、そんな「石ころ帽子」を被っているような気がする時もある、メタボの48歳のオッサンです。

ということは、まだまだ、これから、

なんですね。僕は。

明日はどっちだ!


この記事の執筆・監修者

春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。