全部、社長のせいですから
新コロ騒ぎで、世間も、経済界も、我が出版業界も右往左往しつつありますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
そんな新コロちゃんのせいでしょうか、やはり今月に入ってから売り上げが落ちているように感じます。書店からの注文も減っているし、最近出した新刊もめっきり売れません(といっても全て新コロちゃんのせいではない可能性も大いにあり、真相は分かりませんが……)。
ということで、経営が徐々に厳しくなるという、やがて曇りのち雨、そして豪雨、という天気予報が私の脳内にチラチラと速報を出すようになりました。
会社は生き物です。常に血液(現金)が無いと心臓も動かなくなりますし、家族(社員やその家族、自分の家族も)に与える血液も無くなってしまえば、社員からもいつか見限られてしまいますし、印刷会社、製本会社、紙屋、デザイナー、著者、大家さん、運送屋さん、電気、ガス、水道、ネットワーク関連などなど、にも血液を支払わないといけません。もしそれが滞ったら、自分の血液もすべて出し切ってでも、支払わなくてはならないのが社長!なんです。最近、貧血で……なんてこともよくあるのが、中小企業の社長というものなんでしょう。
そして、血液が作れなくなるのは、これすべて社長の責任です。社長のせいです。社員が悪いわけでもなく、取引先が悪いわけでもなく、著者が悪いわけでもなく、強い会社にできなかったのは、社員がついてこなかったのは、著者が離れていったのは、取引先から信用されなくなったのは、すべて社長のせいです。血液が作れなくなって、会社が潰れたら、どっかの首相みたいに言葉だけの「責任はすべて私に」では済みません。連帯保証人の実印を、社長の実印を押してしまっていますから、法的にも、これすべて社長の責任。全部、最後は社長がなんとかしなくてはいけません。それこそ死んででも借金を返さなくてはならない(と、ゴーンみたいに莫大な資産がない真面目な中小企業の社長は、生命保険で払うとか、いろいろと最後の手段がそれしかないように思い込んでしまって追い込まれる仕組みに日本社会がなっている。実際に中小企業の経営者の自殺はかなり多い)のです。それが日本の中小企業の社長さんです。
だから中小企業の社長は大変なんです。だから長い年月、風雪に耐えて生き抜いている中小企業の社長は本当に偉大だと思います。神様はそんな中小企業の社長たちに何か社長賞をあげてくれればいいのに……。またこんな新コロちゃんみたいな悪魔を寄こすなんて、なんて惨いことを……。
新コロちゃんのせいで会社が倒れたとしても、でもやっぱり、そういった天災、自然災害などがいつ起きても大丈夫なように、対策を取っておくのも社長の仕事ですから、倒れたら、やっぱりそれは社長のせいなんです。
中小企業の社長って、そういうもんなんです。誰も最後は助けてはくれない孤高の戦士。それが社長!
この記事の執筆・監修者
春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。