2020年10月08日

編集者と書き手の、越えてはならない一線

某社の天才(自称?)編集者の件でも、ちょっと問題になりましたが(その後どうなったんでしょうか……真相は結局よく分からないままですが)、男性編集者が女性の著者やライター、デザイナー、イラストレーターなどに、セクハラや、それに近いこと(プライベートなこと、個人の携帯電話番号を聞いてくるとか、無理やり個人的に親しくなろうとする行為も含めて、その他もろもろ、本当は女性がやめてほしいと思ってるけど、仕事の関係上、立場上言いにくい)をされて困った、困っている、悩んでいる、苦しんでいる話は、結構周りの同業者の女性からも、時々聞きますが、立場が逆(男性の著者やライターが女性の編集者に対して)の場合も多々あります。大手版元だと、版元の方がライターとかより仕事の力関係が上ということもありますが、それでも相手が大作家だとやっかいですね。 小さい出版社の場合も、会社の力がないので、どうしても書いてもらいたいがために、著者やライターに強く出れない場合も多々あり、本当は嫌でも言えない女性編集者もいます。 ここは、あんまり語られてきていない部分なのですが、出版社の経営者としても悩ましい問題です。 これは、ちょっとやっかいで、よく出版界の、「昭和の良い話」的に語り継がれてるような伝説の女性敏腕編集者の話とかでは、某著名作家の担当編集者が、その作家の生活にまで関わっていて、その作家が亡くなった時は葬儀も取り仕切ったとか、そういったことが武勇伝のように出版界では語り継がれていますし、先日の『男はつらいよ』の50作目の映画でも、作家になった満男の女性担当編集者が、作家の子供の面倒(勉強を教えてあげていたような…)まで見ていたりして、どうやらこの二人はこのあと結婚するのでは?なんて観た人に思われるような雰囲気でした。映画は良かったのですが、そこだけすごく出版人としては気になってしまいました。 そういったことが普通にあるように思われている?出版界ですが、それは、当然のことですが、あくまでその担当編集者の女性が、その男性作家に、仕事を超えた個人的な愛情を抱いている場合に限ると思いますので、まず、そんなことは滅多にないことですし、あんなこと(子供の面倒までみる)をもし作家さんから強制されたら、非常に困ってしまうと思います。 なかなか出版社の経営者としては、書きづらい、言いにくいことですが、ちょっと思ったことを書いてみました。

※追記

この投稿、特に著者やライターの方に、誤解を生みそうで怖いのですが、かといって「編集もビジネスなんだから、ドライで良い」ということを言いたいわけでは無いです。

編集は、著者やライターさんと一緒に一つの本を産み落とすという行為、文字を通して、書き手の内面、精神的な深さに関わる仕事なので、ドライにできる仕事ではないですし、やはり本作りは創造する作業で、盛り上がると恋愛のようになることもあります。

ただ、その時に、特に異性の場合は性的な問題、同性同士であってもプライベートまで踏み込む行為など、本作りで編集者と書き手が精神的に近づく過程で、気をつけないといけない、越えてはいけない一線があるということが言いたいだけです。


この記事の執筆・監修者

春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。