2021年07月07日

背伸びばかりしてきた

私は今年の12月でついに50歳になる49歳。織田信長や西郷隆盛が志半ばで死んだのも49歳。歴史に残るような人物であっても、この年齢は限界を迎える歳なのかもしれない。

最近いろいろと自分の能力の低さに、自分自身で呆れ、失望することが多い。「俺ってこんなに馬鹿だったのか…」とか「ずっと自分の能力を過大評価していた。今やっと気づいた」とか。

よく考えたら俺の人生、ずっとこんな感じだった。
若い頃は、自分は歌が上手いと信じ、自分の声ならプロの歌手になれるかもしれないと、人前で歌を唄うどころかバンドを組んだこともなく、高校の文化祭に出演したことすらない、ただ部屋で一人でギターをつまびくだけの完全に井の中の蛙であったが、それでもひたすら背伸びをして、高校を出ると、すぐに東京に出てアパートで一人暮らしをしながらフリーターをしつつ曲を書く日々、そのあとライブハウスのオーディションを受けて、2度目のオーディションでなんとかライブハウスでレギュラー出演をするようになり、同時にレコード会社のオーディションも片っ端から受けたが、40回ぐらい受けたオーディションは全敗。テープ審査の段階で全て落とされた。
それでも自分には才能があると信じて40歳までライブ活動を続けて、最後に小さな音楽プロダクションの人の目にとまり、その音楽プロダクションでボイストレーニングほかプロデビューするための訓練をしつつ、初めて本当にプロデビューに向けて道が開けたかと思ったのも束の間、そのプロダクションに所属して頑張っている、自分より遥かに努力していて才能も技術も自分よりずっとあるデビュー前の多くの若手の演奏を聴いて、初めて自分が20年やってきて若手に負けているのでは、到底プロになるのは不可能と思い知った。他にも、明らかにプロレベルの歌と作曲センスがあり、定職にもつかずに音楽一筋でやっている人でもプロになれていないミュージシャンとも出会い、サラリーマンと二足の草鞋でやっているこの私に、そもそもプロの歌手になる資格もないと、完全に打ちのめされて、40歳にしてついにプロの道を諦める。

フリーターを辞めて、初めて正社員で働いた書店時代は、自分はかなり仕事ができる人間と思い込んで、書店員を辞めてIT業界に転職するも、まったく使えず精神を病んで退職して無職になり大きく挫折。

そのあと出版社に転職し、最後はその出版社の社長の跡を継げるほどの能力が自分にはあると思い込んで執行役員統括部長にまで過大評価されて昇進するも、たいしたリーダーシップも能力もないのにそれに気づかずに無理をして1年半頑張るも挫折。結局最後はその出版社も退職に追い込まれる。

そして今、私は小さいながらも年商6000万円の出版社の社長、経営者になってしまった。
今までの人生で、もしかしたら、これが本当の背伸びなのかもしれないと、もしかしたら一生かかっても返せないほどの負債をコロナ融資で抱いてしまった私は震えるのである。

この私に、この借金を返せるほどの仕事が果たして出来るのだろうかと。

ずっと背伸びをしてきた。しかし、でもやはり、これからも背伸びをし続ける。

背伸びでもしないと、私はただただ何者でもない。
自分が驚くほどの素晴らしい景色は、背伸びでもしないと見ることはできない。

背伸びをしてでも壁を乗り越え、躓いてても、前を向いて生きていく。

それが私の生き方なのだから。

この記事の執筆・監修者

春日俊一(かすが・しゅんいち)
株式会社アルファベータブックス代表取締役。埼玉県生まれ。
若い頃はシンガーソングライターを目指しながらフリーター。その後、書店員、IT企業、出版社の営業部を渡り歩いたのち、2016年にアルファベータブックスに入社。2018年に事業承継して代表取締役に就任。